RE100とは?

今回は今年から来年にかけて、日本でもかなりの勢いで聞く言葉になりそうな、「RE100」に関して書いてみたいと思います。

RE100は日本語では「アールイーひゃく」と読みますが、英語のRenewable Energy(リニューアブル エナジー)の頭文字のRとEを取って名付けています。また、100というのは100%という意味で、企業が自社で消費するエネルギーを100%再生可能エネルギーにしよう、という運動です。

2014年に世界的に有名なNGOが掲げたもので、2018年7月22日現在で世界全体で140社が加盟しています。すなわち、世界中の140社が自分たちの会社で使うエネルギーを100%再生可能エネルギーにする、ということです。

ここで言う再生可能エネルギーとは、水力、太陽光、風力、地熱、バイオマスのことです。(原子力発電は含まれていません)

日本ではまだまだ石炭、LNG(液化天然ガス)の使用が70%程度をしめていて、再生可能エネルギーは15~16%とまだまだ一部であるため、すべての電力を再生可能エネルギーにする、というのはちょっとピンとこないかもしれません。

というのも、RE100に関して日本の状況はと言うと、2017年末時点で次の3社のみしか加盟していませんでした。

・2017年4月 リコー
・2017年10月 積水ハウス
・2017年11月 アスクル

この時点では世界全体ではRE100への加盟は122社であるため、日本の3社は世界全体で見るとわずか2.4%ということです。ところが今年に入ってさらに次の7社が加盟していて、2018年7月22日現在でトータル10社、世界において日本企業が占める割合が7.1%と3倍に跳ね上がっています。

・2018年3月 大和ハウス工業
・2018年3月 ワタミ(外食産業で世界初)
・2018年3月 イオン
・2018年5月 城南信用金庫
・2018年7月 丸井グループ
・2018年7月 富士通
・2018年7月 エンビプロ・ホールディングス(リサイクル業界で世界初)
※順番は加盟順でRE100のツイッターを参照

RE100に加盟すると自社事業で消費するエネルギーを20XX年までに100%再生可能エネルギーにすると宣言し、毎年報告することが義務づけられますので、これらの企業は自分たちで決めた年に向けて100%にすることをコミットしたことになります。

 

では、なぜ企業が今、RE100に加盟するのでしょうか?

 

もちろん、責任ある企業経営を遂行するために再生可能エネルギーを利用し、二酸化炭素の排出量削減に貢献することが一番の目的です。

ただ、もう1つの側面として、環境に配慮した責任ある企業経営をすることが、消費者から選んでもらう、認めてもらうための必須条件になってきているためです。

この動きは欧米では特に活発で、日本でもよく知られているRE100への加盟企業は、ITではグーグル、アップル、フェイスブック、マイクロソフトなどがあり、他にも洋服のH&M、家具のイケア、スターバックスなども加盟しています。

 

驚くことに、再生可能エネルギー100%を達成するために、これら企業が何をしているか?

 

1つの戦略が自分たちで風力タービンを購入して電力発電を行っているのです。

 

えっ、IT企業が風力タービンですよ。洋服のH&Mが風力発電ですよ。

 

どこまで本当か、と思い調べてみましたが次のグラフが過去5年の風力タービン購入企業です。

出典:アメリカ風力エネルギー協会

 

こうやってみると、グーグルが圧倒的に購入していますね。

グーグルは再生可能エネルギー100%を達成する年度を超アグレッシブに2017年とうたっていたので、2017年に向けて一気に行動した、ということになります。ちなみに日本のRE100に加盟している多くの企業は2050年までに100%達成を目指しています。

 

欧米企業が超積極的に動いている背景にはパリ協定が大きく関係しています。パリ協定とは、気温上昇を産業革命前に比べて2度未満に抑えるというものです。そのため、21世紀後半までに温室効果ガスの排出量を実質的にゼロにしようというもので、そのために各国に排出量の枠が決められました。

その結果、化石燃料を所有していても二酸化炭素の排出枠に引っかかってしまうため、使えなくなった、つまり座礁資産(使えなくなった資産)になってしまい、投資家から投資が引き上げられる、ということが起こっているためです。

企業からすると投資を引き上げられないようにするためにも、逆に投資を呼び込むためにも、再生RE100に加盟することは大変重要なことなのです。

パリ協定や座礁資産の話はこちらに詳しく書いたのでぜひ読んでみてください。

ビジネスの地殻変動、止まらないESG投資

 

また、IT企業が風力タービン、洋服会社が風力タービン、金融会社が風力タービンと思う人もいるかもしれませんが、これも欧米と日本の発想の違いで、欧米の多くの企業は「バックキャスティング」という発想で動いています。バックキャスティングとは、目指すべき目標を設定してそのために何ができるか、という発想です。つまり、後ろ側(バック)から計画を立てる(キャスティング)、ということです。

グーグルで言えば、2017年までに再生可能エネルギー100%を実現する、そのために出来ることとして、風力タービンを購入して風力発電で電量をまかなう、という発想です。

実はSDGsはバックキャスティングの発想で目標設定されています。つまり、「2030年にSDGsが定める目標が実現されていないと世界はやばい状態になる。持続可能な世界を実現させるために実現方法は分からないものもたくさんあるが、設定した」というものです。

日本では、カイゼンを代表するように前年度比XX%改善するアプローチが得意ですが、これをフォアキャスティングと言います。つまり、前に向かって(フォーキャスト)、計画を立てる(キャスティング)、という意味です。バックキャスティングとフォアキャスティングのどちらがいい、という話ではなく発想の違いがある。ただし、SDGsはバックキャスティングの発想でそれに世界193か国が同意した、ということです。

バックキャスティングに関しても以前記事にしたので、興味がある方はぜひ読んでみてください。

SDGsを実行に移すキーワード「バックキャスティング」とは?

 

今年の夏は酷暑と言われるほど暑い日が続いています。また、異常気象が頻発していて、もはや「異常」ではなくなってきて「日常」になってきています。

温暖化を語る時、ゆでガエル現象で例えることがありますが、ゆでガエル現象とは、カエルを熱いお湯に入れると驚いて跳ね上がるのですが、ぬるいお湯を徐々に温めていくと、温かくなっていることに気づかずにゆで上がってしまう、というものです。

気候に言えば、毎年徐々に温度があがったり、徐々に異常気象が増えてくると、その変化に気づかずにゆで上がってしまう可能性がある、ということです。

 

では、一個人としてこれに対してどうアクションを起こすか?

 

それは、消費者という力を使うことです。

つまり、今回のテーマで言えばRE100に加盟している企業の商品を購入することやサービスを利用する人が増えれば増えるほど、RE100に加盟する企業が増える、RE100に加盟する企業が増えれば増えるほど、RE100を選択する消費者が増える、というサイクルを作る一役になることです。

RE100以外にも、以下のようなMSC(海のエコラベル)、ASC(養殖のエコラベル)、FSC(森のエコラベル)のマークがついた商品を購入することが、消費者という力を使うことを意味しています。

RE100を取得した大手スーパーのイオンにはMSC、ASCのマークがついた商品が結構あります。まずは、イオンに行った時にこのマークを探してみることから始めてみてください。

      

 

ちなみに、イマココラボのメインバンクは、2018年5月にRE100に加盟した城南信用金庫です。城南信用金庫は以前から持続可能な社会を作る取り組みに積極的で、会社設立当初からお世話になっています。これも消費者の力(サービス利用者の力)を利用する小さな一歩です。

 

いつかではなく「イマ」から、どこかでではなく「ココ」から、半径5メートルからSDGsを実現していきましょう!

 
 

参考:RE100のホームページ

 

記事:イマココラボ村中作成