ビジネスの地殻変動、止まらないESG投資

言われつくされた感もあるのですが、それでも止まらない地球温暖化対策に関して、ビジネスの側面から大きな地殻変動が起こっています。今回はその地殻変動を見てみたいと思います。

環境問題に詳しい方は知っている情報かもしれませんが、一方で聞いたことはもちろんあるけどあまり詳しくない方も多くいらっしゃると思います。その方々にこの情報を共有できたらなーと思います。

というのも私自身がちょっと前まで聞いたことはもちろんあるけどあまり詳しくしらなかったからです。ちゃんと知れば知るほどこの流れは止まらない、むしろ加速していくようにしか見えなくなったからです。

 

あらためてCOP21とパリ協定

地球温暖化を止めるために一番重要なイベントは2015年に行われたCOP21です。COP21は気候変動枠組条約締約国会議(Conference of Parties)の21回目の会議のことで、そこで採択されたものがパリ協定です。

 

何が決まったかと言うと、気温上昇を産業革命前に比べて2度未満に抑えるというものです。(1.5度未満にする努力目標も加えられています)そのため、21世紀後半までに温室効果ガスの排出量を実質的に0にしよう、というものです。そのために各国に排出量の枠が決められました。(温室効果ガスとは、地球温暖化に影響を与える二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、フロンガスのことを言います)

 

パリ協定でビジネス界に何が起こっているのか?

投資家のサイドから見るとSDGsのような持続可能なことに対して積極的に取り組む会社に投資することをESG投資と言います。Eは環境(Environment)の頭文字、Sは社会(Social)の頭文字、Gは企業統治(Governance)の頭文字です。つまり、環境や社会に配慮する会社に投資していこう、というものです。

一方で、ESGに配慮していない会社からの投資を撤退させる動きも加速しています。分かりやすい例が化石燃料を使ったビジネスの売り上げが高い企業からお金を引き上げる、ということです。

 

なぜ、投資家が投資を撤退する動きを加速しているのか?

 

それが、パリ協定での約束です。

 

どういう意味かと言うと、世界中に今ある化石燃料を全部使った場合に排出される二酸化炭素の量は3兆トン弱と言われています。一方でパリ協定で合意された排出できる二酸化炭素の量はその約3分の1です。つまり、残りの約3分の2の化石燃料は持っていても使用できない資産になった、パリ協定を経て資産が資産でなくなることが決まった、ということです。このことを座礁資産(価値が一気になくなる資産)と呼びます。

 

これを象徴する出来事が2016年にロックフェラー家基金がエクソンモービルの株式を売却したことです。なぜ象徴的かと言えば、ロックフェラー家は石油により巨万と富を得たのですが、エクソンモービルは自分たちが作った石油会社だからです。自分たちの象徴とも言える会社から投資を撤退させるということは、化石燃料に頼ることが本当に投資の観点からしてマイナスということが言えるということです。

他にも、日本ではそれほどニュースにはなりませんでしたが、110兆円を運用するノルウェー年金基金は、2016年に日本の電力会社5社からも投資撤退しています。理由は、収入の30%以上を石炭関連の事業から得ているからのようです。

ちなみに、投資を英語ではインベストメント(Investment)と呼ぶのですが、投資撤退をその逆のダイベストメント(Divestment)と呼びます。

他にも多くのお金がダイベストメントされていて世界中で600兆円がすでにダイベストしたと言われ、その勢いは益々加速すると言われています。世界最大級の投資会社ステート・ストリートは、「2008年のリーマンショック以降、より大きな利益を得るためには、金融以外の物理リスク、訴訟リスクを回避するためにもダイベストメントしESG投資へ回す必要がある。我々はすでに18兆円ESGに投資した」と言っています。

もちろん、より持続可能な世界を創り出すことに貢献するという観点もあるのでしょうが、あえて投資家的、ビジネス的な表現をすれば、リスク回避のためにESG投資をする、というものです。

これが今、ビジネスの最上流で起こっていることなのです。

これそのものがいいことかどうか、というのもありますが、ビジネスにおいて地殻変動が起こっている、ということは事実です。

 

本当に地球温暖化になっているのか、という問い

トランプ大統領が地球温暖化は嘘っぱちっと言った話も含めて、一部では地球温暖化と二酸化炭素排出は関係ないとか、長い歴史で見れば一時的に温かくなっているだけだ、などと報道されたりすることもあります。

企業で研修を行う時も参加者同士でディスカッションをする時間に「地球温暖化と二酸化炭素排出は関係ない」という話をされている方が時々いらっしゃいます。詳しく聞いてみると専門家ではなく、みんなが話している方向の逆の意見を言いたい、という感じで話しているケースが多いです。

そういう私も、詳しくない知識で「地球温暖化と二酸化炭素」が関係していない可能性もあるのでは?と疑う目を持っていた時もあったので彼らの気持ちが理解できるのですが、知れば知るほど確実に相関があることが分かります。

このことに関して私が説明するほど専門家でも何でもないので、1つおススメの映画があります。

「不都合な真実」という映画です。これはアメリカの元副大統領のアル・ゴアが主演で出ていています。彼はインターネットを仕掛け人とも言われていたりしますし、ブッシュ大統領と大統領選で争って微妙な得票数で裁判まで行われ結果敗れた人なのですが、ライフミッションとして環境問題に取り組んでいます。

彼は環境問題の危機的な状況に対して講演を全世界各地で何度も何度も行うのですが、その講演をベースに作成された映画です。その講演の内容がユーモアたっぷりにも関わらず本当に論理的で(副大統領になるような方なので当たり前ですが笑)、論理で正しく理解したい私は彼の説明によって本当の意味で腹落ちしました。それ以上にアル・ゴア元副大統領の人として反対意見の人に対して戦うのではなく真摯に向き合うあり方に惚れこんでしまいました。

彼は言います。「本当の変化は一人ずつ真実をちゃんと伝えていくとこからしか起こらない。ちゃんと伝われば必ず変わっていく」と。

本当の理解、変化は戦いからは起こらない、相手を否定するのではなく自分が信じた真実を実直に表現していくことなのだと思います。

「不都合な真実」ですがアマゾンプライムであれば199円で見られます。他のネットの映画サイトでも見られると思うので興味がある方はぜひ見てみてください。

さらに先日まで「不都合な真実2」が上映され、今年の4月からネットの映画サイトでも見れるようになりました。この中では、パリ協定に最後まで反対するインドに対して、アメリカの企業が持っているソーラーパネルの特許を無償提供する仲介をすることで、インドにイエスを言わせたシーンもありました。これもやっぱり素敵すぎました。ただ、まずは「不都合な真実」を見てください。それで興味がさらにわけば「不都合な真実2」を見てもらうと流れもよくわかりますし、その結果このテーマに関する知識も増えます。

 

SDGsすべてに言えることですが、正しい行動を起こすためには正しい知識が必要だということです。そのためには、問題や課題に対して関心を持つことが大切だとも思います。

最近の企業研修でもSDGsカードゲームでSDGsに興味を持ってもらった後に、我々日本人が関係する社会問題や課題に関して考えるパートを追加で行うケースが増えてきました。

正しい知識を持つことが正しい行動につながり、その結果として持続可能な社会につながっていくと思います。SDGsや社会課題とビジネスをつなげ、そこからよりよい持続可能な社会を創ることに興味がある方はお問い合わせフォームからのご連絡お待ちしております。

 

記事:イマココラボ村中作成