【SDGs社内浸透事例】ゲームを通じて深まる「自分ごと」感/ユニリーバ・ジャパン株式会社
「環境負荷を減らし、社会に貢献しながらビジネスを成長させる」とのビジョンを掲げ、サステナビリティ先進企業として世界を牽引するユニリーバ。環境や社会に向けた取り組みを本業と切り離すのではなく、ビジネスを成長させるために必要不可欠なものとして捉える先進的なあり方が注目されています。
「SDGsについて知っている社員は多いです。“知っている”という状態から、業務と関連づけて捉えたり、アンバサダーとして社外に広めていったりできるようになってほしいと思っています。」とお話くださったのは、同社広報の新名司(しんみょうつかさ)さん。
そこで、SDGsに対するより深い理解と共感、「自分ごと」の感覚を醸成していくことをねらいとして、社員の皆さんにカードゲーム「2030SDGs」を体験していただきました。
2030SDGsとは?
2030SDGsは、場全体がひとつの「世界」となり、その中で各プレイヤー(今回は2人1組のチーム)がカードによって示された「人生のゴール」の達成に向かって活動するゲームです。
活動は「プロジェクトカード」で示されます。プレイヤーは、開始時に配られた「タイムカード」「意志のカード」「お金」を元手に、様々な開発プロジェクトを実施していきます。プロジェクトカードは経済に関するもの(青)、環境に関するもの(緑)、社会に関するもの(黄)の3つに分類されており、例えば「原子力発電所の利用廃止」「環境保全ボランティアへの参加」「都市部への一極集中促進」といったものがあります。一見してポジティブな感じのものもあれば、判断に迷うようなものもあるのが特徴です。
プロジェクト実施には必要な「お金」や「時間」などの条件が設定されていますが、カードとは別に設定されている重要な条件に「経済」(青)、「環境」(緑)、「社会」(黄)の状況を示す「世界の状況メーター」があります。(メーターは、ホワイトボードにマグネットを貼って示しています)開発プロジェクトを実施すると、プレイヤーが新たにお金やタイムカードや意志のカードを獲得すると同時に、「経済は+1」「社会は−1」というように世界の状況メーターにも変化が生じる、というしかけになっています。
ゲームは前半戦、後半戦の2回に分けて行い、間に「世界の状況」についてファシリテーターからの共有があります。
「世界の状況メーター」で示される世界全体の幸福と自分の人生の目標を、同時に、しかも、多様な目標をもつプレイヤーの集まる「世界」の中で追求していくところに、面白さが生まれます。
社会の縮図が見えてくる
20名の方にご参加いただき、ゲームがスタートしました。さっそく活発なやりとりが始まります。手持ちのリソースを使ってプロジェクト達成に行くチーム、他のチームにカードの交換を持ちかけるチームなど、アクションは様々です。合意さえあればどのようなアクションをとっても構わない、というのもこのゲームの大切なルールです。
今回は、前半の8分間ですべてのチームが「人生のゴール」を達成しました。一方で、メーターで示される世界の状況は、「経済」は絶好調なものの、「環境」「社会」は課題がある、といった状態になっています。「これ、本当に社会の縮図だね。」とのつぶやきが聞かれます。
「世界の状況を好転させる」という共通の目標が見えた後半戦。「どうにかして『社会』のポイント増やせないかな」などと、全体に声をかける動きが生まれ始めました。自然と全員が一カ所に集まって、それぞれのカードを見比べたりやりとりしたりしています。
やがて、輪の中にいた一人が「あ、できる!」とゲームマスターの所へプロジェクト達成を告げにゆき、「社会」が1ポイント上がりました。「おお!」というどよめきと互いへの拍手が自然に起こり、タイムアップとなりました。
ゲームを通して気づく「自分のありよう」「社会との関わり」
後半戦を終え、ゲームを通しての感想や、気づいたことをシェアしていただきました。
- 「自分の目標を満たしてから始めて他のことに目が向く自分に気づきました。とすると、通常の仕事の上でも、立てた目標を1年の前半で達成して、残りの時間で社会のためになることをしていく、ということができるのではないかと思います」
- 「ディスカッションできたのがとても良かったです。見える化された共通の指標があるからこそだと思いました。」
- 「普段、他の人やチームがどんなことをやっているかって、案外分からない。会社にも、分かりやすくみんなに見えるバロメーターを設定したら面白いと思います。」
- 「人を巻き込むことで、活動自体の価値もあがり、賞賛も受けて、自分のモチベーションもあがる。会社も同じだと感じました。」
「ゲームをやってみた感想」から、「ここで得た学びを会社にどう生かしていくか」へと、ご参加者の思いは及んでいきます。自分の行動が世界に与える影響を、ゲームを通じて擬似的に体験し、「自分ごとである」という感覚が深まっている様子が見てとれます。
最後に、ファシリテーターから、現在の社会問題の構造についてインプットがありました。
「大切なのは、われわれが、われわれの社会問題として捉えることからだと思います。ゲームで体験してきたように、わたしたちがパラメーターを意識するかどうかで、世界のありようが変わってきます。社会の状況を見える化して共有することに、SDGsの意味があります。」(ファシリテーター)
豊かな気づきから明日が変わる
終了後にも、数人のかたからご感想を伺いました。
- 「ゲームという面白くて入りやすいところから、世界の課題を考えるきっかけになりました。」
- 「自分のアイディアを、全体に対して言う、ということがなかなかできませんでした。普段の仕事の中でも同じようなことがあるかもしれないと気づきました。いろいろな発見があったので、明日からこうしたい、という思いが、今すごく沸き上がってきています」
- 「環境は大事だということは知っているけれど、自分には変えられない、と思っていました。ゲームを通して、自分が経済活動を重視していることに気づき、そういう自分の価値観に気づくことで、環境について自分が変えていけることが見つかりそうな気がしています」
- 「わたしはユニリーバの環境に対する取り組みに感動して入社したのですが、自分の業務はサステナビリティど真ん中ではないと感じていました。2030年までに何ができるかを疑似体験することで、わたしも、有限な時間を大切にしてアクションを取っていこう、と思えました。」
- 「今まで、やりたいことがあってもどう実現していったらいいのか想像もつきませんでした。今日、チェックアウトのときに、『こういうアクションを取ってみようと思います』と話したら、『それやりましょう!』と乗ってくれる人がいたんです。ゲームを通してアクションすることの大切さに気づけたのと、自分のアイディアを話したら乗ってくれた人がいた、というのが、大きな収穫でした。」
仲間と一緒に楽しんでゲームに取り組むうちに、自分の仕事について、また、持続可能な社会を創ることについての豊かな気づきが生まれ、明日からの行動が変わる…そんな2030SDGsの効果を体感していただける時間になりました。
文責:八田吏
■ 取締役人事総務本部長島田さんインタビュー(3分32秒)
■社員の方インタビュー(2分31秒)
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