【SDGs社内浸透事例】社内浸透における2つのポイント
上場メーカーA社は、営業部出身のCSR室長が辣腕を振るうCSRの先進企業でもあります。しかしそんなA社でもSDGsのインパクトを現場に伝えていくのは困難なことだと言います。
そんな困難さを、人材・組織分野での知見を活用して解決した事例をご紹介します。
これはA社に限ったことではないのですが、現場で働く方の多くは「CSR」という冠がついた瞬間に、優先順位の低い話として、処理する傾向があります。
実はそれにはもっともな理由があります。
ステレオタイプに言えば、ごく普通の社員がCSRに対してもっているイメージは、だいたいこんな感じです。
「CSR、ああ、あの世の中にいいことしましょう、のやつね」
「いいことだけやってる、コストセンターでしょ」
「世の中は酸いも甘いもあって、現実はそれではやっていけないんだよね」
「理想はわかるけど、こっちは四半期目標で忙しいんだ」
つまり、別の言葉でいえば、現場で業務に勤しんでいる人には「CSR=優先順位の低い=自分の業務とは関係ない話」と理解してる傾向が(程度の差はあれ)あります。
これらのイメージはある一面では正しいと思います。なぜならCSRが企業活動で上げた利益の一部を使って本業とは別になされる慈善活動を意味していた時代が実際にあったからです。
ご存じのとおり世界のビジネスの潮流はもはや変わっています。SDGsやESDという名のもとに、本業としてgoodであり利益も上がる活動をどうデザインしていくのか、そしてそれができない企業は厳しい状況になっていく、そんな流れはますます強まっています。
社内でSDGsを推進しようとしている方は、こうした変化を現場の人に伝えるべく、志向錯誤されているわけですが、そこに先ほどの「CSR=優先順位の低い=自分の業務とは関係ない話」という壁が登場します。
実はSDGsの重要性が企業内で浸透しない理由は2つあり、一つ目はこの壁です。
つまり、CSR系の部門が発信しているというだけで、自分の中の情報処理スタンスを決めてしまっている人が多い点です。
そしてもう一点は、こうした壁が存在しているにも関わらず、それを考慮しない情報の伝達が多い点です。
あえて分かりやすくいうならば、こんな会話をしている状態といえるかもしれません。
A「どうせあなたの言うことは、私にとってあんまり重要じゃないに決まっている」
B「これから難解なんだけど大事なことをいうから、まず1時間聞いてください」
こんな状態では、Bさんがどれだけ熱心に伝えようと(17のゴール169のターゲット・・・云々)Aさんは聞きませんし、寝ているかもしれません。いや、むしろそんな場を設けること自体を認めないかもしれません。
ちょっと前置きが長くなってしまいましたが、A社ではこの2点に注意してSDGsを広めるイベントをデザインしました。
ひとつはタイトルを「ビジネスの新潮流」セミナーとして、既存の”壁”に引っかからないようにしました。サブタイトルや告知文章も工夫をしたのですが、要は「あなたがもっとも関心がある、売上拡大や競合とのコンペに勝つ確率を上げるような話です」というメッセージを打ち出しています。
もちろん内容も、ビジネスの事例をふんだんに使い、事前の期待値に答えられるようにしました。
もうひとつはカードゲームを使って「興味が薄い人でも引き込まれ、結果として学習が進む」ように設計しました。ゲームというとっつきやすいインターフェイスを使って、誰でもが気軽に参加できて、SDGsの重要性がわかる、というところをゴールにしています。逆に細かい項目についてのいわゆる”学習”はあえて含んでいません。
浸透を仕掛ける側からすると、せっかくの機会なので「169ターゲットを少しは読み込みたい」とか「自分の事業と紐づけて考えられるようにしたい」とつい欲張ってゴールを設定しがちです。
ここは成人学習において本当に重要なポイントです。
つまり「大人は自分がメリットを感じたものしか学ばない」のです。
why(学ぶ理由、自分にとってのメリット)が見いだせないのにwhatやhow(169のターゲットや自分の事業との紐づけ)を学ぶことはありません。SDGsを浸透しようとしている人が犯しやすい過ちもここにあります。
逆にいえば、SDGsを学ぶ重要性が自分の中で確立されれば、自分で調べたりして自発的に取り組む可能性があります。このwhyとwhat/howの関係は、大人の学びにおいてはしっかりとデザインされる必要があります。
結果的に、A社では現場の代表者100名超に対して、2回にわけて3時間程度のイベントを実施し、高い評価をいただきました。許可をいただき、以下に参加者のコメントを転載しますので空気感を感じていただければ幸いです。
- 最初に長々と講義があるのが通例だが、今回はゲームがあって、それを踏まえて講義という流れだったので、とてもよかった
- 多様なゴールが「つながっている」ことを利用して、指標化・数値目標化して「道床異夢」を実現する、という考え方がよく理解できた。労働者と資本家の二元論と比較してとても納得感があった。
- 今までのグループワークで一番よかったです。研修的なグループワークは「やらされている感」があり、課題などをこなしているだけでとにかくやっただけという状況がよくあります。今回は無理なく自らやる気や考える気になる内容で、非常に良いと思いました。
今後もグループワークをやる場合は、こういったスタンスでお願いしたいです。
- 難しい概念をカードゲームという形で分かりやすく学ぶことができた。社会の流れとSDGsがどのように結びついているかを習得できるゲームだった。
- 単純なゲームかと思いきや、SDGsを身近に体験でき、かつ事象の「意味や理由」を考えさせられる本質的なゲームだった
- SDGsという単語自体を初めて聞いたレベルでしたが、一気に概要理解をするには良い題材だったと思います。
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