ユニリーバ・ジャパン 再生プラスチック採用のプロセスでの意識啓発~後編 社内で人を巻き込んで動いていく時に、大事だと考えていること~
2030SDGsの公認ファシリテーターであり、ユニリーバ・ジャパン・サービス社で商品開発を担当されている設楽美和子さんへのインタビューを全3回の記事でお届けします。
2019年秋冬、ユニリーバ・ジャパンの主力ブランドである「ラックス」「ダヴ」「クリア」から、再生プラスチックを最大で95%パッケージに採用した商品が発売されました。
前編では、なぜこのような商品を開発したのか、どのようなプロセスで開発されたのか。中編では、ユニリーバ・ジャパン社内でサステナビリティに取り組む機運がどのように高まってきたのか、開発プロセスの中でどのように2030SDGsを活用されたのかについてうかがいました。
後編では、開発の中での設楽さんの思い、大事にされてきたことについてうかがいます。
話し手:設楽美和子さん
聴き手:イマココラボ桝田
前編:ユニリーバ・ジャパンのサスティナブルの取り組みとは
中編:突然のサステナブル宣言~私たちにできることって?の当惑
いまココ▶後編:社内で人を巻き込んで動いていく時に、大事だと考えていること
開発への思い
―前編で詳しくご紹介いただいた、再生プラスチックをパッケージに採用した製品を開発しよう、と考えた時、設楽さんにはどんな思いが最初にあったのでしょう?
いろいろと理由はあるのですが、年初の全社会議の中で、ある方の講演を聞いたことがひとつのきっかけです。「問題を外から眺めて解決しようするのではなくて、問題のど真ん中に自分を置いて取り組む」といったお話でした。それでその時、今年は問題のど真ん中に自分を置こうと思ったんですよね。
同じ会議で、社内のサステナビリティボードでメンバーに入りたい人は誰でも入っていいよ、という社長の話を聞いて、私入りたいです、とその場で社長に言ったんです。
―その場で! すごい行動力ですね。そのサステナビリティボード、というのはどういったものなのでしょうか。
当時の社長がチェアマンを務める、会議体のひとつでした。サステナビリティというトピックについて検討、推進するための。役職に基づいて参加が求められるものではなくて、サステナビリティに関心がある社内メンバーなら、希望すれば誰でも入れる会議体でした(現在、この会議体は無くなっています)。
―その会議での活動が、今回の実際の製品化につながったのですか?
そうです。もう少し具体的にお話すると、サステナビリティボードに入ってから、その中に「ドライブ サーキュラーエコノミー チーム」というチームを作りました。10人くらいのチームからスタートしました。このチームは今も稼働していて、現在22名になっています。
―なぜそのようなチームをつくられたのでしょうか。
モノ作りをするメーカーの社員は、「循環型経済」を作りたい・目指したいと思っている人は多いはず。でも、サステナビリティ案件を小さなプロジェクトを通してそれぞれ個人で推進するには限界を感じていて。それだったら、実はその案件は、この部署で動いているよとか、こんなアイデアがあるけど、どこかで採用してもらえないだろうか、みたいなことを情報共有できる仕組みがあれば良いなと。誰もが安心して前に進めるようになるのではないかと思いました。
ドライブサーキュラーエコノミーチームはその領域にパッションのある人たちで構成されていて、各メンバーが良いと信じることを日々の業務の中で行ったり、アイデアを思いついたり。
そのパッションを大事にして、チームの中で情報共有したいという思いがひとつにはありましたね。
―「開発がリードしないと」って、ファシリテーターになられた頃から仰っていましたよね。設楽さんの中で本当にぶれないポイントだなと思っています。
例えば、グローバルCEOが「環境負荷を半減し、社会に貢献しながらビジネスを2倍にする」と対外的に宣言したとします。対外的なコミュニケーションを担当するのは広報。ただ、実際に宣言したことを実現するためには、開発や購買が製品を設計する際に具現化していかないと成立していかないこと。社内で情報共有を加速させたり、議論を起こす場を作ったり、仲間を増やしていったりという活動は、開発のメンバーがイニシアチブをとることによって、本気度が伝わるというか、魂がこもると言いますか。現実感が増すと思っています。もちろん、その際に、広報のメンバーと一緒になって進めていくことが重要かと思っています。行きたい先(未来)は、一緒ですからね。
社内で人を巻き込んで動いていく時に、大事だと考えていること
―前回おうかがいしたように、サステナビリティはひとつの部署で完結するプロジェクトではありませんよね。社内の他の人を巻き込んで、プロダクトや流れ、動きを作っていく際に、設楽さんは何を大事にされているんでしょうか?
ドライブサーキュラーエコノミーチームで大切にしていたのは、ユニリーバ・ジャパンの中で仲間をつくることです。
ユニリーバに入社してくる人は、大なり小なりみんなサステナビリティは大切には思っていて。でも日々の業務の中で、そんなサステナビリティを中心に叫ぶ事ってなかなかできないと感じることもある。
でも、いろんなことを思ってもいいし、それを大切に思ってもいい、なぜならば同じことを思ってる人が他部署にもいた、みたいな。なんか仲間をね、なんか増やしていきたいっていうのがあって。メンバーを増やしてった感じですね。
―仲間をつくる。同じ気持ちの人が社内にいるとわかる、って、とても嬉しい気持ちになりますね。その気持ちをつなぐ、気持ちに働きかけていく。
みんなの温度をちょっとあげる感じです。
それから、全社で同じ方向を向いていっていると共感できること。
社内でサステナビリティの活動を大きくても小さくてもいいので行っている場合は、ドライブサーキュラーエコノミーチームの会議で情報共有して欲しいとお願いしています。
―情報共有・共感の場のようなものでしょうか。
はい。いろいろな人がいい意図を持って、いろいろなイニシアチブをいろいろな部署で始めてしまう、ということが企業としてよくありがちではないかと思っていて。
みんないい意図だからそれぞれいいのだけれど、結局じゃあユニリーバ・ジャパン全体として何をしてるの? とか、どこに向かっているの? ということが包括的に見えないことに対して、イライラする人たちも出てきます。それによってリソースが分散することもある。
だからなるべく見えるように情報共有してもらって、同じ方向を向いている一連のアクティビティなんだ、と理解を深められる場にできたらと思っています。
―様々な関心や立場の方が、会社全体でやっていることなんだと安心できるように、ということですね。とても大事なことだと思います。
サステナビリティに企業として取り組んでいくために、とても示唆に富んだ貴重なお話をお聞かせいただきました。改めて、本日はお時間をいただきありがとうございました!
インタビューを終えて
設楽さんにお話をうかがって、サステナビリティに取り組んでいる企業と言えば必ず名前の挙がるユニリーバ社にも、サステナビリティへの舵を切った当初には困惑と、どうすればいいのだろう、という試行錯誤があったというお話が印象に残りました。
社内の方々の思いがあり、その思いをつなげる設楽さんのような方がいらっしゃるからこそ、サステナビリティの象徴ともいえる商品が形になっていくのだなとも思っています。
後日、設楽さんから「ユニリーバ・サステナブル・リビング・プラン」を発表してから10年を迎え、この間日本で行った取り組みの一部を紹介されている公式な動画を教えていただきました。
https://www.unilever.co.jp/sustainable-living/japan-actions/?fbclid=IwAR3ppr6Gb4318T1EofANUP0mVfATRbFrFYvP8QcwCjESL6VQMopOVGJ-p04
本記事に関連があるのは、以下の部分です。
「持続可能な原料の使用」では、設楽さんが話をされています。
5:47~ 再生プラスチックへの考え方
7:45~ 持続可能な原料の使用
よろしければぜひご覧ください!
全3回の記事には書ききれなかったお話もたくさんうかがいました。
設楽さんをゲストにお招きして、サステナビリティへの思いや商品開発の中で感じていることなどのお話をうかがうイベントを開催します。
設楽さんにある思いを形にすることへの粘り強さ、人の気持ちを汲んで働きかけていくしなやかさ、とても魅力的な方だなと思っています。
ご興味おありの方は、ぜひ以下イベントの詳細をご覧ください!