【ビジョン / 中期経営計画事例】そこに創りたい未来はあるか?「中期経営計画作成 preワークショップ」
中期経営計画は今や企業経営に欠くことのできないツールとなっています。一方でややもすると(計画の素晴らしさとは裏腹に)実態は「妥協の産物」だったり、逆に実感を伴わない「絵に描いた餅」であるケースも見受けられます。
3~5年という本質的戦略的に重大な意味を持つ期間の経営計画策定を、どうデザインするかはまさに経営上の大命題のひとつです。
これは、長期視点と短期視点、経営意識と現場意識、変革と現状踏襲など、組織に存在するギャップをどうひとつの方向性にまとめていくか、という話でもあります。
本事例はそんな重要なプロジェクトの一部を担当させていただいた事例です。
大手機械メーカーA社では、ホールディングスの経営企画部門が主導で、各事業部の部長クラスと事業部門部付きの経営管理セクションが連携し、3年間の中期経営計画を作っていました。
このプロセスは毎回踏まれているのですが、多くの大企業同様、参加する現場部門の方がそもそも中期経営計画の策定自体に、それほど前向きではないという状況でした。
A社では(よくある話ですが)部門はコスト/人員削減の中での売上増、イノベーションを求められています。しかし現場には「これ以上どうしろというのだ」という感覚が基本的にあります。
このまま策定プロセスに入っていくと、方針や数字をめぐって「現実」と「理想」の不毛な綱引きが始まってしまいます。この綱引き自体にも疲れ、そして、最終的に策定された過去の中期経営計画の「絵に描いた餅」ぶりにも疲れた状態で次の3年間を走る、そんな状況がA社にはありました。
この状況を打破するために取られたのが、本策定前に全6回のワークショップを行うという施策です。参加者は部長クラスと各部所属の経営企画セクション、合計30名弱の方々でした。
この一連のワークショップは、2つの意味を持っています。
ひとつは1)現場レベルの意識(特に視座)の変容、もうひとつは2)さまざまなファクト、データ、分析を示すことで各部門の計画策定自体をサポートする、というものです。
現場で奮闘されている方の意識が、現場・4半期フォーカスになっていくのは自然なことである意味避けられません。ただその意識があまりに強い状態は、中期経営計画を策定するのに適切ではありません。
口でいうのは容易く、そして実践するのが難しいこの転換は、例えるならば、直射日光があたる場所から急に暗い部屋に入ったときに、眼がなれるまでに少し時間がかかるのと同じです。短期サイクルにフォーカスした意識を調整するにはある程度の時間と仕掛けが必要です。
全6回のうち、2回はこの「転換」をメインの目的としてデザインしました。
その中でもカードゲーム2030SDGsは参加者の意識とモードを切り替えるのに絶大な効果がありました。(実施した週にある部長さんから「すぐにわたしの部でもゲームを実施したい」とご連絡をいただいたほどです)
ただ、意識(視座)が変わるだけですべてが解決するわけではありません。
そこで、さまざまなファクト、データ、それに加えた分析やトレンド解説など、中期経営計画の策定の補助になりそうな着想、データを残りの4回で掴んでもらいした。
イメージは戦い出向く人たちに「とにかく頑張れ、それがあなたたちの責任と裁量だ」と伝えるのではなく「効果的だと思える武器を、融通してあげる」という感じです。
これが計画策定のサポートです。
実はこのサポートは同時に、「従来の理解と違う世界状況を知る」とか「傾向として知っていたことが圧倒的な数字で示される」ことを通じた、視座の変容サポートであります。
4回ずっとインプットを聞くのではなく、都度チームごとにアウトプットを出したり、分析を加えるところを自分たちでやってもらったりと、本来の意味で”ワークショップ(=工房)”になるようデザインをしました。
一連のワークショップを終えてみて、事務局であるホールディングスの経営企画部門からは「前回(の中計策定)の時とは市場環境も違うので厳密な比較はできないが、とにかく皆さんが格段に明るくて、前向きなのがいい。本当の意味での評価は次の中計が終わったタイミングなんだろうけど、今の段階では大成功」との評価をいただきました。
他の関連事例はこちら
バックキャスティングで発想する組織へ「ビジョン&事業計画策定プロジェクト」
現状の延長線上にある未来ではなくSDGs的視点でバックキャスティングとメンバーの自発性からビジョンを創造し、事業計画を策定した事例です。
この事例で実施したサービスはこちら
SDGsで描かれている世界観へのシフトは100年単位の社会システム全体の変容。理想の未来から逆算してバックキャストでビジョンを策定します