【ビジョン/中期経営計画事例】バックキャスティングで発想する組織へ「ビジョン&事業計画策定プロジェクト」

「現状の延長線上にある未来ではなく、部員全員がコミットできる真の未来ビジョンを持った組織にしたい」

M部長から連絡をいただいたのは、春先のことだったと思います。

以前研修を実施したときにお伝えした所感が心に残っていたというM部長。わたしがお伝えしたそのフィードバックは要約すると「小さな改善を積み上げるのは得意だけれども、理想を描いて、そこからバックキャスティングで発想、行動するのが苦手」というものでした。

これは現在、非常に多くの組織で見られる共通の課題でもあります。

M部長が率いているのは、デジタルマーケティング企業の、BtoB営業を担当する部門です。

同部は会社の事業再編に伴い、従来複数の部門に分かれていた機能を統合し、それまでにない付加価値を出すことを期待され発足しました。連絡をいただいた当時は、発足から3年がたち、一定の成果はあったものの、M部長の言葉を借りれば「本来的なポテンシャルからするとまだまだ」という状況でした。

世の中の多くの部門がそうであるように、同部もクライアントからの要求水準は高く、サービス特性として継続的に運用を続ける必要があることもあり、メンバーは極めて多忙な状況にあります。

そんな、日々の業務で忙殺される中で、どうしたら時間軸を伸ばして、高い視座をもつことができるのか。また受け身やヤラサレではない、未来の姿をどうやって共有・創造していくのか。

M部長からの依頼をうけて、そんな組織の変容を半年にわたってサポートさせていただくことになりました。

 

幾度かのディスカッションを経て、定めた同プロジェクトのキーコンセプトは以下です。

  • 人と組織をエンパワーする「真のビジョン」は与えられるものではなく、組織の構成メンバーの自発的な動機から生成的に生まれてくる。
  • 「生成的」とは組織メンバーの集合的学習と自律的な行動により、環境を創りだすことで変化を生み出し、その一連のプロセスを再び自らの学習や行動につなげていく、自立自走的なサイクルのことである。
  • 外部コンサルタントはその自立自走を生む「プロセス」を補助し、組織メンバーによる生成的なサイクルをサポートする存在とする

当初から終始一貫して意識をしていたのは、いかにして自立自走の状態を創りだすか、ということでした。そのために少し遠回りのようではありますが、組織の関係性の質を高めること、未来の枠を広げて発想すること、などを含めた、6つのモジュールとしてデザインしました。

 

 

モジュール1ではよりオープンに、本質的なことが語れるよう関係性を再構築します。

モジュール2では2030SDGsも使って視座を通常のレベルから、中長期を語るに足るレベルまで引き上げます。

モジュール3ではバックキャスティングの手法を使って可能性に目を向けていきます。

モジュール4で具体的な計画を策定し、モジュール5で直接的に本プロジェクトに関わっていない大多数のメンバーを巻き込み、プロジェクトを再構築します。モジュール6は必ずやってくる困難、停滞をどう生かしていくか、という視点です。

(ちなみにモジュール2と3は宿泊を伴う合宿形式で実施しています)

 

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宿泊場所からは富士山が綺麗に見えていました

特にモジュール4、5は、やっている内容だけをみると、どの組織でも普通にやっていることのようにも見えます。ただモジュール1~3があることによって、まったくレベル感の違う取り組みになります。またモジュール6は1~3があることによってはじめて実現可能なのです。

ちなみに「自立自走」というキーワードはモジュール1から言葉と仕組みの両面から常に共有され続けています。その最たるものが手あげによるメンバーの入れ替え。スタートアップメンバーは役職+手あげで選ばれていますが、部門全員への共有の場が設けられており、プロジェクトへの参画を希望すれば途中からでも参加が可能です。またスタートアップメンバーでも途中でメンバーを外れることも自由としました。

 

 

本当に力強いビジョンが紡がれていくときには、意思の自由さが担保されているかどうかはかなり重要です。本プロジェクトでは、なるべく既存の価値観、フレームワークの外に行こうとする姿勢が随所に見られました。

例えば「本当に本当のところどんな働き方が理想なのか?」を従来の働き方にひっぱられずに深堀するセッションで、組織をマネジメントする立場のメンバーから「転職するならどんな会社がいい?」という問いが出されました。普通(特に管理職にある方は)「その行動が組織にとってどんなメリットがあるのか?」という発想を手放すことはなかなか難しいものです。その意味でこうした問いが出されること自体が、小さな一例ですが、可能性に対して常にオープンで、探究的な場であったことを表す一つのエピソードだと思います。

本プロジェクトは、部門として言語化された共有ビジョンと、新しい2つのプロジェクトを生み出しました(1つは新規事業に関するもの、もう一つは部内の人材育成に関するものでした)

そして、もう一つのとても大きな成果は、本プロジェクトを進めるプロセス自体が、各メンバーの関係性を高め、ともに進んでいくコミットメントを高めたことでしょう。特にモジュールの4以降は、わたしたちはごく限られた関与しかしておらず、自立自走の状態が生み出されています。

そんな空気感をお伝えするために、プロジェクト終了後の皆さんのコメントをいくつかご紹介します。

・ビジョンの要素を含めながら、グループを超えて意見を出し、サービス開発に進められたことが自体がよい体験、よい刺激になった。

・まだ始まったばかり。半年間考えたアイデアを昇華させたい。そして何よりビジョンに向けて少しでも前進したい。

・それぞれが思い描く具体的なビジョンのイメージを共有できた。まだ、手応えまでは行かないが横断したグループ間での意見交換を通して、ビジョンに向けてトライアルしたいことを決定できたことの意味はとても大きい

・大変だったけど楽しかったです!

・ここからが本番。ビジョン達成にむけて、新サービス領域でのトライ&エラーを繰り返し、近づいていきたい。

・まずは、リーダーとしてスキルセットの体系的整理を行いたい。そして「心」の育て方についても考えていきたい。

・我が部発で他部署にも波及していけたらいいな

プロジェクト全体がどんなトーンで進んでいるのかが各コメントに現れていると思います。

M部長からも高い評価をいただき、このあと他部門や子会社をご紹介していただき、同様の(もちろん中身は各組織の実情によってまったく変わるのですが)プロジェクトをさせていただいています。

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