【SDGs/ESG事例紹介】機関投資家からパイプライン建設に懸念表明。銀行が融資撤退

イマココラボの村中(むら)です。

今回は、トランプ大統領が大統領令を出したパイプライン建設に関して、機関投資家からの働きかけで、銀行が融資を引き上げ始めているという、投資家側からSDGsの世界が本当に動き始めている話をご紹介します。

 

パイプライン建設を巡る共同声明

トランプ大統領が大統領になった当初、次々に大統領令を出したのですが、その1つにダコタ・アクセス・パイプライン建設の再開があります。

ダコタ・アクセス・パイプラインとは、全長1886 kmにおよぶ地下石油のためのパイプラインを施設するためのプロジェクトで、オバマ大統領時代に、環境などに対する影響が大きかったため、パイプラインの建設ルート等を見直などの対応をするため一旦停止されていたものです。

それを、トランプ大統領が大統領令を使って再開させました。

 

ところが2017年2月16日、森林破壊、河川汚染、土壌汚染、大気汚染、生物多様性破壊の懸念から、主要機関投資家100以上が建設プロジェクトへ融資している世界の銀行17行に対し、プロジェクトへの懸念と懸念に適切に対応すべきとの共同声明を発表しました。(*1)

つまり、主要機関投資家100以上がタッグを組んで、お金を貸している銀行に圧力をかけた、ということです。

 

機関投資家から声明を突きつけられたのは、声明での発表順に、三菱東京UFJ銀行(日本)、バイエルン州立銀行(ドイツ)、ビルバオ・ビスカヤ・アルヘンタリア銀行(スペイン)、BNPパリバ(フランス)、シティバンク(米国)、クレディ・アグリコル(フランス)、DNB(ノルウェー)、中国工商銀行(中国)、ING(オランダ)、インテーザ銀行(イタリア)、みずほ銀行(日本)、ナティクシス(フランス)、ソシエテ・ジェネラル(フランス)、三井住友銀行(日本)、サントラスト・バンクス(米国)、トロント・ドミニオン銀行(カナダ)、ウェルズ・ファーゴ(米国)の17行で日本のメガバンクが3行とも入っているようです。

出典:National Geographic

 

さらに、その声明を受けて、3月21日にING銀行(オランダ)、3月26日にDNB銀行(ノルウェー)、4月5日にはBNPパリバ証券(フランス)が融資の引き上げを決定しました。その総額は5億7千万ドル、プロジェクト融資全体のおおよそ22.8%にのぼります。(*2)

 

この変化は現在進行形なので、もっと多くの銀行が融資から引き上げる可能性もあります。

 

現在進行形で起こるSDGsの動き

日本でも世界最大の投資規模であり我々の年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が、環境や社会などに配慮した投資を行うことを宣言した国連が定めた責任投資原則であるPRIに2015年9月に署名しました。

 
PRIとはPrinciples for Responsible Investmentの略で、日本語では責任投資原則と言い、世界の解決すべき課題をEnvironment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)の3つの分野(総称してESGと呼ぶ)に整理し、ESGに配慮した責任ある投資を行うことを宣言したものです。
投資家からのESG投資への関心が高まりも踏まえ、世界で1500以上の企業や組織がPRIに署名し、運用対象の資産合計が60兆ドル(約6000兆円)に達しています。つまり、60兆ドルもの資金を環境や社会に配慮した企業に投資していこう、というものです。

 
日本でも世界の動きに連動し、投資家の視点からもSDGsの達成に貢献していこうとする企業へのESG投資がさらに高まっているため、このような投資家からの働きかけが日本でも今後益々起こってくるだろう、と企業向けのイベントや研修でお伝えしているのですが、まさに現在進行形で起こり始めている事例です。

 

 
企業にとってSDGsは待ったなし。
逆にここにこそビジネスの種が埋まっている事例もたくさん出始めています。

 

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■参考URL

*1 Sustainable Japanの記事

https://sustainablejapan.jp/2017/02/20/investor-statement-to-banks-financing-the-dakota-access-pipeline/25636

 

*実際の共同声明(英語)

https://www.calpers.ca.gov/docs/investor-statement-to-banks-financing-dakota-access-pipeline.pdf

 

*2 BNPパリバの融資撤退

【フランス】BNPパリバ、米ダコタ・アクセス・パイプラインへの融資から撤退

 

*DNB銀行の融資撤退(英語)

http://fortune.com/2017/03/26/dnb-bank-dakota-pipeline/

 

*ING銀行の融資撤退(英語)

https://www.ing.com/ing-in-society/sustainability/ing-and-the-dakota-access-pipeline.htm