関西大学の交渉学ワークショップにて「2030SDGs」ゲームが実施されました

2017年2月25日(土)、関西大学千里山キャンパスで開催された第10回交渉学ワークショップにて、イマココラボ公認ファシリテーターの亀井直人さんによる「2030SDGsワーク」が行われました。
このワークショップは、午前の部に2030SDGsワーク、午後の部に学生が企画したワークの二部で構成されました。当日のレポートを以下にご紹介します。

 

午前の部

日本ファシリテーション協会の亀井直人さんを講師にお招きし、「2030年の世界を作る! 国連が全会一致で採択したSDGsをゲームで体験する」をテーマとしたワークを実施しました。興味深いネーミングと内容に惹かれ、46名が参加しました。

そもそもSDGsって何?とお思いの方もいらっしゃいますよね。SDGsとは、Sustainable Development Goals(SDGs)は2015年9月の国連総会で採択された「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」と題する成果文書で示された具体的行動指針です。それは、17の大目標とより詳細な169項目の達成基準からなるものです。

今回行った2030ワークは「日本で開発されたカードゲーム「2030SDGs」はSDGsで掲げる17の大目標を、私たちの世界が達成していく、現在から2030年までの道のりを体験するゲームです。時間、お金、プロジェクト、意思の4種類のカードがあり、プレイヤー毎に異なるゴールを達成することと、世界の経済、環境、社会をどう両立させるかを体験していくものです。

前半戦

ルール説明が終了し、前半戦が開始されました。

  

Aペアの「ゴール達成のために”緑の意志”を集めよう!」、Bペアの「“時間”を15枚以上集めるぞ!」という行動と同じく参加者の皆さんは、ペア各々のゴールを達成するために交渉相手を探し回っています。ペアそれぞれが自分たちの利益を考え交渉しているため、早々にゴールを達成し時間を持て余しているペアがいたり、お金カードのみが手元に残っていたり、時間カードを持っているペアが少なくなっていたりと参加者間で差ができてきました。残り時間をどう過ごそうか、あるいは交渉時間が足りない!という想いが交わりあう中、前半戦が終了しました。

後半に入る前のブレイクタイム

もう少し時間があったらゴール達成できたのに…と残念そうな参加者のみなさん。

さて各々のゴール達成に向かって行動した結果、世界の状況メーターはどうなったのでしょうか。なんと、経済:11、環境:0、社会:4になっています。

私たちは生きていくために経済、環境、社会、すべてを必要とします。多少の偏りがあるとしても環境バロメーターが0である世界は「豊かな世界」であると言えるのでしょうか。

世界の現状を把握したうえで挑む後半戦が始まりました。

後半戦

前半にコメントをいただいたAペアとBペアの行動に変化があらわれました。

Aペアは「世界の状況メーターが低くても実施可能なプロジェクトを探しています!」、Bペアは「社会貢献できるように、私たちペアの条件で達成できるプロジェクトを持っている人と交渉しよう」と、世界の状況を視野に入れた行動をしているようです。

前半ではペアのゴール達成を最優先していた参加者がほとんどでしたが、今では1つの社会貢献をクリアしては、また新しい社会貢献をしようと世界の状況バロメーターを上げることを最優先しています。1つ1つクリアしていくために、1ペア対1ペアの交渉を重視しているようです。前半よりも交渉がスムーズに進み、社会貢献をクリアしていくペアが多くなる中、後半戦が終了しました。

ゲームを終えて

「お疲れさまでした~」と笑顔で感想を述べあう参加者の皆さんが気にしているのは、世界の状況バロメーター。後半戦で世界の状況を視野に入れながら行動した結果…経済:16、環境:5、社会:9となりました!! 環境バロメーターだけでなく全ての数値が上がっています。

この結果から、ペアのゴール達成という自分たちの目先の利益に捉われず、他ペアの利益も考慮しながら交渉することは「世界の状況バロメーターを上げる=豊かな世界を作る」ことに繋がる重要なポイントであることが分かりました。

2030SDGsワークを通して身をもって「交渉学」を体験することができたと充実感にあふれた笑顔で感想を述べる参加者の皆さん。

私が取材させていただいたBペアの学生さんに感想を聴いてみました。

「これまで交渉学ワークショップに何度か参加したが、世界の状況を考えながら交渉したのは初めてでした。最初はルールが難しく、ペアの方と話し合い、まずはゴール達成を最優先しようと決めて前半戦に挑みました。前半戦は、とにかくゴール達成のことだけを考えていたので、達成後は交渉を控えていました。その時、社会貢献については正直他ペア任せであったと思います。しかし環境バロメーターが0であることに気づいてからは、他ペアに協力してもらうという形で交渉するようにしました。参加者のほとんどが前半と後半で考え方が変化したのではないでしょうか。実際の世界ではバロメーターが目に見えるわけではありません。皆が常にアンテナを張り、情報を収集し、行動しなければ世界は何も変わらないのではないかと思います。」

2030SDGsを通して交渉学を学ぶことができたので、非常に有意義な時間を過ごすことができました。2030SDGsワークの周知徹底や発展に期待します。

 午後の部

学生が企画したセッションは計10個。身近なテーマで実際に模擬交渉を行うものや、交渉学の基礎とされるクリティカルシンキングに焦点をあてたものなど、交渉学に関するセッションはもちろん、1つの写真を使って”人によって見え方が異なる”ということを楽しむもの、学生の学びをサポートする学生( Learning Assistant:通称LA )に関するものなど様々です。

「交渉学ワークショップなのに、関係がないセッションもあるのは何故?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし交渉学とは直接関係がないように見えても、自分と異なる考え方に触れ、物事を様々な視点から見るということは交渉学を学ぶうえで重要なことです。

前に立って話すセッション企画者の学生は生き生きとしています。

なぜなら「自分が企画した物からどのような結果が生まれるのだろう」とワクワクしているから。企画と参加者の皆さんの化学反応を楽しんでいるのが表情や動作に表れていました。

企画者の学生らは、参加者の皆さんに感じてほしいものを大事にしながら自分のセッションに力を入れ、空いた時間には参加者の皆さんと会話を楽しんだり、他の学生が行うセッションに参加したりと積極的に有意義な時間を過ごしているようでした。

全てのセッションが終了し閉会式の会場に移動している時、「お疲れ様でした」とすれ違いざまに声をかけてくださる参加者の皆さんの表情は、充実感に満ち溢れているようでした。

今回、学生がこれまで学んだものや得たものを”ワークショップ”という形で参加者の皆さんに共有しました。学生が行うセッションを通じて何か感じるものがあったなら幸いです。

私たち学生は参加者の皆さんから刺激をされています。ワークショップという場では、参加者側と同じように、企画者側も違った考え方や新たな発見に出会います。このように参加者と企画者間で刺激しあい、また企画者間でも刺激しあうことで私たちは成長しようとしています。

誰にとっても“学びの場”になるこのワークショップに、是非参加してみて下さい。

亀井直人さん、参加者の皆さん、企画者の学生の皆さん、ワークショップを支えて下さった先生方、ありがとうございました。

文責:関西大学文学部総合人文学科 心理学専修2回生 上田 綾香さん