インド政府の意欲がすごい。2030年までに炭素排出車を全面規制し、100%電気自動車にする方針を表明

イマココラボの平手です。

インド政府が世界に先駆けてモビリティ政策(自動車)についての驚くような方針を表明しました。今日は、このインド政府の方針についてまとめてみます。

インド政府は ” 2030年までにガソリン車やディーゼル車の販売を全面規制し、インドで販売する自動車を全て電気自動車に限定する” との方針を表明しました。

国内販売は100%電気自動車にするという、これまで他国にもない意欲的な政策を打ち出そうとしていますね。

 

 

インドでは、現在2013年12月に発表した『国家電気自動車計画(NMEM)』のもと、電気自動車の普及を推進しています。2015年4月から2016年3月までの電気自動車の販売台数は、前年比37.5%増の2万2000台で、2020年までには電気自動車とハイブリッド車を合わせた年間販売台数が600万台から700万台規模に拡大する見通しを立てています。今回は、この政策を更に発展させ強力に推し進めるものです。

ゴヤル・エネルギー相は、政府として電気自動車の開発努力を助長するため、今後数年間補助金を供与すると表明し、この政策が進めば早期に電気自動車の採算が取れ、政府の資金援助がなくても十分に経済的にもやっていく事ができるとも伝えています。

この方針がとても素晴らしいと思うのは、“ 国家レベルで100%規制する方針を打ち出し、後がない状態を創りイノベーションを促そうとしていること”です。

同様の政策は、これまでドイツの連邦政府が、2016年9月に「2030年以降は、自家用のガソリン車とディーゼル車の新規登録は中止する」との議決(拘束力がない)をしており、EUへの働きかけを開始しています。インドもこれに追随し、更に政策レベルに落とし込みをしていこうとしています。

もう一つ。個人的に興味を持ったのは、”トランプ米大統領が地球温暖化対策のパリ協定からの離脱を宣言した直後に、インドのモディ首相は同協定を順守する努力を倍増するとの決意を表明”した点です。

この表明は、この首相の発言を裏付けるかのようなタイミングであり、このことからインドは米国のパリ協定の離脱を政策上のチャンスと捉えていることがうかがえます。

 

 この政策の背景にある急速に深刻化している社会・環境課題

では、なぜ、インドは、この政策を強力に押し進める必要があるのでしょうか?

その必要性を確認してみたいと思います。

インドが、この政策を推し進めたい背景には、年々深刻化する各都市部の大気汚染と騒音被害があります。

現在、大気の汚染度が最も深刻と言われるPM2.5の濃度は急上昇しており、1立方メートルあたり1000マイクログラム。インド政府の推奨値の16倍にもなります。

毎日新聞の記事によれば、2016年のWHOの発表によればニューデリーの状況は、世界3000年の11番目に悪く、上位20位以内に10都市が入るほどインド全体で環境問題が深刻化しているとされています。インドの主要都市ではほとんど問題を抱えていることになります。

また米国のニューヨーク・タイムズ紙によれば、ニューデリーの大気汚染はここ17年で最悪の規模で、人体に及ぼす影響は1日にタバコを2箱以上吸うのに等しく、住民たちは屋内の空気清浄機のそばに集まり、子供や老人、そして呼吸器系の病気を抱えた人々は、汚染によって健康を害す場合や、最悪の場合は死に至る可能性すらあるともいわれています。

日本においてすら、交通渋滞の中や高速道路付近では咳き込んだり、顔が黒くなったりしますが、インドのそれははるかに深刻な状況にあります。現在の状況は下記をご覧ください。

動画によるニューデリーの大気汚染の状況(出典:毎日新聞)

現在のPM2.5の排出量はこちらをご覧ください。リアルタイムで更新・危険レベルが表示されます。

>R.K. Puram, Delhiの大気汚染:リアルタイム大気質指標(AQI)

 

インドにおける自動車産業の位置づけ

インドというと綿花やテキスタルなどを連想しがちですが、インドでもGDPに占める製造業の割合は急激に高まっています。

自動車産業は2013年から2014年にかけ164%の伸びを見せ、それ以降も継続して成長を続けています。インドは、国内総生産(GDP)の製造シェアを2022年までに現在の15%から25%に引き上げる計画をしており、その中で自動車産業の果たす役割は大きくなります。

インドの自動車会社の最大手は、日本のスズキとインド政府の合弁会社である「マルチ・スズキ」です。こういったところにも、日本企業の貢献が垣間見えるのは、嬉しいですよね。炭素排出車は既に先進国によって、シェアを抑えられています。

社会環境課題の解決と共に、後発のインドが、製造業の発展の意味でも、電気自動車に活路を見出そうとしているとしても何ら不思議ではありません。

出典:インドにおける各メーカのシェア (SIAM/マークラインズより作成)

 

まとめ

正式な政策としての公表にはもう少し時間が必要であり、インド政府の試みは始まったばかりですが、これをキッカケに各国の自動車産業は、本格的に電気自動車のイノベーションを行っていく必要性に迫られてきます。

デロイトトーマツコンサルティングがまとめた自動車業界の展望では、2050年ごろに実現する想定だった100%電気自動車の世界は、このインドの政策等によって約20年間も前倒しで実現される可能性が出てきています。

あとは、どこまで政府として、この方針に拘束力を持たせることができるか。

日本にも早晩、同じように電気自動車を中心とした自動車販売が来そうですが、社会課題などの性質が違うため、取り組みに対する本気度があがっていないというのが実情です。世界は着実に動いています。その中で、どんな選択をしていくのか、日本社会にも問われる瞬間は、もう目前に迫っている。そんな気がしています。

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