NTTデータ社 ~SDGsと社会課題に触れる2日間~ 後編

NTTデータ社で実施した宿泊型研修レポート、前回の続きです。
2日目は、「社会課題の実際、起きていることを体験として知り理解する」ことを目的として、2日目は、NPO法人Leaning for All(以降、LFAと表記)、コミュニティ推進事業部長の石神さんと、スタッフのみなさんに全面的にご協力をいただきました。

 

■3. 社会課題の背景を理解する。現場に触れ、実践している人の声を聴く

LFAは子どもの相対的貧困という社会課題に対して、貧困の連鎖を止めるために、子どもたちへの学習支援と居場所支援という2つの事業を展開しているNPO法人です。
石神さんのご講演や、スタッフの方のパネルディスカッション等でお話をうかがい、学習支援の現場も見学させていただきました。

午前の講演では、データを用いながら、LFAが取り組まれている相対的貧困の状況について石神さんにお話しいただきました。

 

LFA石神さんによる講演

その中で、リアルな貧困とはどういう状態か、を考えるためのワークを行いました。

「まずみなさんの家計の月の支出について、家賃や食費などの項目と金額を書き出してみてください。だいたいでいいですよ」

「家族構成によって貧困のラインは異なります。ここに家族構成ごとの月収を書き出しますので、みなさんそれぞれご自身の家族構成ではいくらになるか? を見てください。
たとえば母1人、子ども1人だと月14万円になりますね。

先ほど書き出していただいた支出の項目について、合計14万円以内に収めるとしたら、何にどう配分しますか? また先ほどの項目と実際の支出の横に書いてみてください」

このワークで何に気づきましたか? という石神さんの問いかけに、参加者のみなさんからは、「今の家にはとても住めない、家賃を抑えないといけないから実家に戻る」という声や、「家賃と食費とでほとんど。体調を崩しても病院にかかれないですね」「子どもの塾や習い事は全部無理、保育園にも行かせられないかも」という声もありました。

「相対的貧困は、住んで、食べていくことはできる。でも家賃に出せる金額から住む場所が限られる。職場から遠くなりやすく、時間にも余裕がない。交通費が出せなくて、行きたいところに行くことができない。習い事も難しい。医療費もかけられず病院に行かない、また風邪をひいても仕事を休むと給与に影響するため、無理をしてでも仕事に行く、という生活になるんです。
収入によって選択肢が大きく狭められてしまうのが、相対的な貧困です」

LFAが支援している、貧困の状況にある家庭の子ども達の状況の例についても、いくつか教えていただきました。

子どもたちの状況の例や、貧困のデータについては、LFAのwebサイトに詳しく記載されています。ぜひご覧ください。
https://learningforall.or.jp/status/

プライバシーもありここで詳しくご紹介はできないのですが、石神さんが直接かかわった数人の子どもたちとのエピソードもお話しいただきました。

エピソードでうかがった子どもたちの置かれている状況は、決して本人の努力不足だとか責任でそうなっているわけではない、と思うものばかりでした。
子どもたちは日々大きくなっていきます。このまま安心できる場所がなく、勉強に集中できる環境もなく、四則演算に不安があるというような状態で大人になれば、就ける職業の選択肢も狭まり、その先も貧困の環境で生きていかざるを得なくなる可能性は高まります。つまり将来への連鎖が続いていくのです。

学習支援の現場も見学させていただきました。

現場で思い思いに学んでいた子どもたちは、たとえば電車で会ったとしても、この子が困難を抱えているとはとてもわからないだろう、と感じる「普通」に見える子どもたちばかり。

「昔は、貧しい家庭の子は同じ服を着ているとか、繕った服を着ているとか、外見からもわかる要素がまだあった。それが現代では、洋服や外見から貧しさがわかることは難しくなり、一見しただけでは、困難な状況にあるとはほとんどわからないです」

困難を抱えている子どもたちは、実際には目の前や隣にいるのだけれど、その状況に気づかなければ、むしろ知ろうとしなければ、困難な状況が見えないのだ、とも感じました。

 

パネルディスカッションでのみなさんからの質問

現場見学、そして石神さんやLFAスタッフの方々のパネルディスカッションのあと、知った・体験したことを一度整理するために、みなさんそれぞれに感じたこと・感じていることを聴き合いました。

後日いただいた2日目の感想からも、知ったこと・触れたことへのみなさんの衝撃がいかに強かったかが伝わってきます。

  • 相対的貧困を目にして、普通の子供達と変わらないことに驚くと共に、自分の経験で世の中に貢献したい
  • 日本の貧困は意外に身近であること、学生の考え方が昔と変わってきたことがよくわかりました
  • 日本が相対的貧困であることが世界で見ても際立っていること、またその事実を世間はまだあまり知らないこと、そのしわ寄せが子供たちにいってしまっていることが印象に残った
  • 貧困が連鎖すること。子供達本人の問題ではない

一日を通してここまで見て、聞いて、触れてきた相対的貧困という社会課題に対して、みなさんが持つ技術や発想、アイディアで、何ができるだろうか? という問いで、2つのグループに分かれて、実験的に考えていただきました。

こんな提携や、仕組みをつくることで子ども達の教育にお金を回すことができないか? LFAに会議室を無償で貸し出す形での支援をしている企業がある。空いている部屋を使ってもらう支援はできるのではないか? という話など、なにか答えを出すというものではなく、実現可能性は一度別にして、考え、話し合う形です。
話した内容をそれぞれのグループに発表いただいて、2日間を終えました。

■では、SDGsやサステナビリティにどのように取り組んでいくのか?

企業や自治体の方から、「SDGsがどのようなものかはわかった。では、どうすればよいのか?」という声を耳にする機会が日に日に増えていると感じています。

世界や社会で起きていることは、さまざまな主体の思惑や行動が影響し合って起きています。
現代においてその影響や関係はとても複雑になっていて、何が原因なのか、わかりづらいものです。
その「複雑であるが故の、わかりづらさ」こそ、私たちがSDGsやサステナビリティについて「説明する」のではなく、ゲーム2030SDGsを通して「体感いただく」形をとっている大きな理由でもあります。

このような世界で、「どうすればよいのか?」について、誰も答えは持っていません。
SDGsは、2030年時点で達成しようとする状態、目指す方向を示している、ひとつの視座です。

誰も答えを持たない。つまり確かな正解はない。

その中で必要なことは、まず「起きていることを知る」ことです。

ただ、起きていることすべてを知ろうとすれば、時間がいくらあっても足りません。
それでも、なにかひとつでも気になる社会課題について、「五感で感じ、体験として深く知っている、知ろうとしている」ことは、自分がそれまで知らなかったことが現実に起きている、という想像力を働かせる上でとても重要だと私たちは考えています。

今回の2日間は、まさにそこにフォーカスをあててSDGsや社会課題を知り、感じてもいただいた2日間でした。

そして、誰も答えを持たない、確かな正解はない、という中で私たちの考える、もうひとつ大事なことがあります。
「目指す方向に向けてとにかくなにかやってみる。小さくても早く形にしてみる」ことです。

山藤さんのお話でも、行動し、形にされたことが人の目に留まった結果、理解や協力を得てさらに大きくなっていく、というプロジェクトがいくつもあるとうかがいました。

正解かはわからないけれども「意図を持って行動する・形にする」ことを、同時多発的に様々な主体が進めていく。素早く、なにかやってみることが生む可能性が、実際の変化をつくっていきます。

ご参加の方々にいただいた、2日間を終えてのご感想です。

  • 研修後、日々意識しながら過ごしている。ビジネスを考える上でも、それが社会にどんなプラスになるかという観点が強く生まれてきた
  • 視野が大きく広がる貴重な研修でした
  • 聞いたことがあるとなんとなく知っているつもりになってしまいますが、自分の五感で感じると納得感や理解度が全く異なります
  • 自身の無知さを思い知らされました。何かしら行動に繋げなければならないという決意をもたらしました
  • 自分に出来ることが少しでもある、そして自分の熱量を誰と合って、何を五感で体験して高めて行くかを考えるきっかけになりました。 少しでも種火が自分に生まれた時には自然に消える前に風を吹かせてくれる何かを見つけたいです

みなさまの中での気づきや視野の広がり、ご自身の中での種火など、すぐ目に見える形になるものではないかもしれないけれど大事ななにかに触れた、お持ち帰りいただいた2日間だったと考えています。
SDGsやサステナビリティの概念、社会や環境に起きていることを知る人が増えていくことで、動きをより大きくしていける可能性も感じています。

今回ご依頼・ご参加いただいたNTTデータ社のみなさま、多大なご協力をいただいた山藤さん、LFAのみなさま、本当にありがとうございました。

イマココラボでは、「SDGsとは何か? はわかった。その先やその次に、事業として何を行っていけばよいのか? どのように進めればいいのか?」とお考えの企業のみなさまに、「起きていることを知る」「とにかくなにかやってみる、形にしてみる」ためのサポートも行っています。

今回のNTTデータ社のように、何を目的とされるか、ご要望やご状況に合わせて、日数や期間も含めて個別のご提案となります。まずはお気軽にお問い合わせください。