2018年版のSDGsインデックス&ダッシュボードが公開。日本の状況は?

2018年7月、2018年版のSDGsインデックス&ダッシュボードが公開されました。

このレポートはSDSN(Sustainable Development Solutions Network:持続可能な開発ソリューション・ネットワーク」)とドイツのベルテルスマン財団が共同で発表しているもので、ごくシンプルにいえば国連ではない民間組織がSDGsの達成と進捗状況をまとめたものです。

 

まずわかりやすい。そしてスピード感をもって現状を知ることができる、ある程度信頼に足るレポート

民間組織といっても例えばSDSNは潘 基文(パン・ギムン)前国連事務総長が発起人のNGOですし、根拠となる数字の一部は国連統計委員会(UNSC)が承認したSDG指標です。

その意味ではステークホルダーも多く間違いの許されない公式発表とは違い「完璧ではないもののスピード感をもって現状を知ることができる、ある程度信頼に足るレポート」だと言えるでしょう。

 

レポートより引用

この報告書に示された見解は、国連のいかなる機関、機関、またはプログラムの見解も反映していません。持続可能な開発ソリューションネットワーク(SDSN)事務局とベルテルスマン財団(Bertelsmann Stiftung)の独立した専門家チームによって作成されています

可能な限り、国連統計委員会(UNSC)が承認したSDG指標を公表していますが、データが不十分だったり公式データがない場合は、その他組織が公表しているデータも活用しながら、インデックスを作成しています

またこのレポートは国別の進捗状況がはっきりスコアにされるなど、かなりわかりやすいのも特徴です。

例えばこんな風に各国のSDGsの進捗状況が色で簡単にわかるようになっています。

出典:SDG Index and Dashboards Report 2018. New York: Bertelsmann Stiftung and Sustainable Development Solutions Network (SDSN). P18より

この画像は横がSDGsの17のゴール、縦が各国の名前になっています。緑が一番状態がよく、赤が一番悪い状態です。ちなみにグレーは適切なデータがないなどの理由で測定不能であることを表しています。

 

2018年の要約

2018年のレポートはいくつかの改変があったため、2017年以前のバージョンとの直接比較はできない、とされています(特に国別の進歩や後退といった意味で順位比較をすることは明示的に否定されています)。

ただ2018年版からは新しく「状況がいい方向に向かっているのか、否か」を矢印で表示する仕組みを導入しています。

出典:SDG Index and Dashboards Report 2018. New York: Bertelsmann Stiftung and Sustainable Development Solutions Network (SDSN). P44より

左から

Decreasing:後退・減少
Stagnating :停滞
Moderately Increasing:緩やかな進歩・増加
On track:このペースであれば達成予定
Maintaining SDG achievement:達成状態を維持している

これにより、単純に現在の状況のGood/Badだけでなく、取り組みの方向性がいい方向にむいているのかどうかがわかります(例えば現状は悪い状況だけど、凄いスピードで改善されていてこのペースであれば達成予定、という状態もありえるということです)。

この点は後ほど、日本の状況のところでもまた触れたいと思います。

世界の状況としては、2018年版では要約として以下のようなことが書かれています。特に高所得国(先進国)が世界の中で果たすべき役割について考え行動することなしにはSDGsの達成は難しいという状況がわかります。

  • スウェーデン、デンマーク、フィンランドがランキングの上位を占めた。ただこの3カ国ですらもSDGを達成するにはいくつかの大きな課題がある。
  • G20で見るとほとんどの国でSDGを導入しはじめたが、その導入レベルには大きな違いがある。一部の国では、戦略、アクションプラン、説明責任システム、整合性をとるための専門組織など確立されているが、その他の国ではこれらの一部または全部が遅れている。
  • すべてのゴールを達成できる見込みの国はまだひとつもない。今年の調査でトップをしめるスウェーデン、デンマーク、フィンランドなどでさえ、このままでは2030年までにすべてのゴールを達成することはできず、目標12(持続可能な消費と生産)と目標13(気候変動)をなどいくつかの点で大幅に加速する必要がある。
  • ほとんどの開発途上国は、所得貧困、栄養不足、保健および教育サービスへのアクセス、基本インフラへのアクセスなど、「あらゆる形での極度の貧困を終わらせる」べく目覚ましい進歩をしている。
  • つくる責任つかう責任(目標12)に対する進捗がきわめて遅い。高所得国は、目標12(つくる責任つかう責任)と目標14(海の豊かさも守ろう)が最低の得点となっている。目標12について過去と比較したデータはないが、目標14については高所得国のほとんどが目標を達成するために近年進歩をしていないことがデータで示唆されている。また目標15(陸の豊かさを守ろう)に対しても取り組みは不十分である。
  • 高所得国の一部はSDG達成のための他国の努力を損なうような著しい環境、経済、および安全保障上のマイナスの波及効果を生み出している。しかし、似たような所得水準の国々間での波及効果の差があり、これは、各国が一人当たりの所得を減らさずに、負の波及効果を減らすことができることを示唆している。
  • データの整備にさらなる投資が必要。

 

気になる日本の状況を解説

では気になる日本の状況をみてみましょう。

出典:SDG Index and Dashboards Report 2018. New York: Bertelsmann Stiftung and Sustainable Development Solutions Network (SDSN). P248より

日本のスコア(Index Score)は78.5で世界で15位(SDGs Global Rank.156か国中)ということがわかります。個別のゴールで見てみると目標5(ジェンダー)、目標12(責任ある生産と消費)、目標13(気候変動)、目標14(海の豊かさ)、目標17(パートナーシップ)が低いことがわかります。

ページ下部を拡大してみましょう。

「CURRENT ASSESSMENT -SDG DASHBOARD」欄には目標別の達成状況が色別に示されています。目標4(質の高い教育)はよい状態にあることがわかります。

さらにさきほどご紹介した「色つき矢印」も見てみましょう。

ページ下部「SDG TREND」の部分を拡大したのが以下です。

例えば目標4(質の高い教育)は先にみたとおり達成度のスコアが高い上に「On track:このペースであれば達成予定」となっていて適切な取り組みがなされていることがわかります。

一方、目標13(気候変動)の取り組みは「Decreasing:後退・減少」となっています。さきほどの情報でも達成状況がよくない状態でしたので「現状が悪いうえに取り組みも悪い」ということが見て取れます。

ちなみにその目標13(気候変動)、具体的になぜ評価が低くなっているのかは、次のページ(本レポートP249)に以下のようにより詳しく説明されていて、エネルギー関連のCO2排出や自動車以外のガソリンエンジン(non-road energy)の影響があることがわかります。

こんな風に、少し詳しく見ていくだけでかなりの情報が得られます。また一部には一見疑問を感じるような指標も採用されているのですが、それを見たり確認したりすることを通じて、どんな社会を自分自身が目指していきたいのかを改めて考えることができます。

例えば日本のジェンダーのスコアを一気に下げているのは、国会議員における女性の比率の低さ(わずか9.3%だそうです)。この数字もひとつの象徴にすぎませんが私にとっては「男性性の発揮が求められる社会システム」について改めて思いを馳せるきっかけになりました。

全編英語の資料ですが、ビジュアルも多用されており、わかりやすいのでぜひ気軽に見てみてください。

SDG Index and Dashboards Report 2018

参考情報:他のメディアでの紹介

ベルテルスマン財団とSDSN、各国のSDGs評価「SDG Index & Dashboards 2018」発表

「2018年版SDGsインデックス&ダッシュボード」が公開