【SDGs 事例紹介】2040年に向けた電気自動車の動向と自動車産業の構造変化

イマココラボの鈴木(ヒロ)です。

最近、自動車産業の動向が熱いのでまとめてみました。

 

フランス2040年までにガソリン車の販売を禁止

7月6日、フランスが2040年までにガソリン車の販売を禁止すると発表しました。EVの価格も1台2万ユーロ(約260万円)程度まで下げ、普及を促すといいます。ルノー、PSAという2大自動車メーカーの大株主がフランス政府であることを考えれば、官民一体で大きな目標を掲げたと捉えられます。

ノルウェーやオランダでは2025年までにガソリン車の販売が禁止される予定で、イギリス・ドイツがそれに追随しています。アジアでは、インドで「30年までに販売する車をすべてEVにする」と担当大臣が発言しており、中国は世界で最も電気自動車の販売台数が多い国です。

 

2040年の電気自動車の新車販売

調査会社Bloomberg New Energy Financeによると、2040年の世界の自動車販売に占めるEVの比率は54%になると予測されています。

 

世界の乗用車販売予測

 

マーケット別の乗用車販売予測

中国、アメリカ、ヨーロッパで自動車販売に占めるEVの比率は60%を超え、2030年以降プラグインハイブリッド(PHEV)が一定割合販売されると考えられている市場は日本だけです。

約1年前の予測では、2040年の世界の自動車販売に占めるEVの比率は35%で、1年余りで予測数値は19%も上昇したことになります。過去の予測を超えるスピードでEVの普及が進められており、技術革新、政策の動向により今後そのスピードはさらに早まる可能性もあります。

テスラの動向と、今後の電気自動車の価格推移

電気自動車で世界から注目を集めているテスラが普及価格帯(約400万円)の電気自動車となる「Model3」の納車をついに7月28日から開始します。「Model3」は既に37万台の予約があり、12月までには生産規模を月産2万台、そして2018年には月産4万台に拡大させる予定と言われています。

「持続可能なエネルギーへ加速する」をコンセプトに、1回の充電で345kmの航続距離を実現し、段階的に自動運転機能も追加される予定です。まさに次世代のモビリティーを牽引する車と言えるでしょう。

これだけのクオリティーの車が約400万円で購入できるというのは驚きです。今後、量産が始まっていくと、バッテリーそして電気自動車の価格はどんどん下がっていくでしょう。そして2025年にはEVとガソリン車の価格が逆転すると見込まれています。この転換点を機に、電気自動車は大きく普及していくと考えられます。

 

EVとガソリン車の価格比較

 

自動車業界の潮流とトヨタの株主総会

100年に1度といわれる自動車業界を巻き込む大きな潮流があります。電気自動車(EV)、自動運転やシェアリング、コネクテッドといった「4つの荒波」が自動車産業に前例のない変化を迫っています。

EVとガソリン車の価格逆転、それは永年続いたエンジンの時代の終焉を意味します。そしてエンジンを根幹技術として作り上げられた、日本の自動車産業のサプライチェーンに大きな産業構造の変化を求めています。

6月14日のトヨタ本社本館での株主総会で株主からの質問が相次ぎました。

株主の関心は中長期のトヨタの競争力に集中しており、「15年から20年先をどうみているのか」「IT企業の自動車参入は手ごわそうだが、どう対抗していくのか」「50年先を見据え、資金をどう使うのか」といった質問でした。

豊田社長は「(これまでのトヨタは)少し守りにシフトし過ぎていたかもしれない」とした上で、「自動車業界は大きな転換点を迎えている。遠い未来の出来事と思っていることが明日起こるかもしれない。守りだけでなく攻めも必要だ。今後はM&Aなども含めてあらゆる選択肢を検討しないといけない」と回答したようです。

2030年、2040年に向けた中長期のビジョンをどう描くか、そして持続可能な経営をどのように実現していくか、それがトヨタ、そして日本の自動車産業に必要とされているように思います。

私は大学で車のエンジンを研究し、3.11以降、電力システム改革に携わってきました。一抹の寂しさもありますが、とうとうエンジンの時代が終わり、電気自動車に置き換わっていく、そんな時代がやって来ます。それは日本の産業構造に大きなインパクトを及ぼすことにもなるでしょう。

「世界の中の日本」という視座を持ちながら、10年〜20年という長い時間軸でビジネス・世の中の動きを捉え、そしてそれを行動に移していくことが、とても大切だと感じています。

 

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