【SDGs/ESG事例紹介】SDGsによる企業価値向上とコーポレートガバナンスの深化

イマココラボの鈴木(ヒロ)です。

最近、SDGs/ESG投資※について投資家の方と話をすることが増えてきました。
※ESG投資とは:環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の英語の頭文字を合わせた言葉。
投資するために企業の価値を測る材料として、これまではキャッシュフローや利益率などの定量的な財務情報が主に使われてきた。
それに加えて、非財務情報であるESG要素を考慮する投資をESG投資という。

SDGsがこれからの潮流になっていくことは間違いないけれど、SDGsを企業価値向上やコーポレートガバナンスにどう結びつけるのか?その道筋を具体的には描けずにいるという話もよく伺います。

そこで今回は、SDGsの企業価値向上及びコーポレートガバナンスとの結びつきについてまとめてみました。

 

SDGs/ESGが企業価値に結びつく経路

SDGs/ESGが企業価値に結びつく経路は以下のようにいくつか考えらます。その中でも、従業員満足度や顧客忠誠心(ロイヤリティ)の向上は、会社の規模の大小を問わず、企業価値の向上に結びつくと感じています。

具体的には、我々がサポートさせていただいている中小企業であるロアジスジャパンの事例を、以前事例紹介でもご紹介しました。

 
SDGsの導入によって、社員の意識は変化し、従業員満足度は大きく向上しました。また、販売戦略を転換し、「サステナブル」であることに理解と共感を示す企業との取引へ集中した結果、販売網の絞り込みを行ったにも拘らず、売上は前年比20%UPしています。

 

SDGsがもたらす市場機会の獲得

中長期的な企業価値の向上手段として、イノベーション等によってSDGsがもたらす市場機会を獲得していくことも重要です。2017年1月の世界経済フォーラム(ダボス会議)においても、「持続可能な開発目標(SDGs)」を達成することで2030年までに少なくとも12兆ドル(1,400兆円)の市場機会がもたらされ、3億8000万人の雇用が創出される可能性がある。と議論されており、SDGsは大きなビジネスチャンスでもあります。

具体的な60分野に関する詳細な記述もありますので、詳しくは以下のレポートを参照ください。

Better Business, Better World

 

SDGs及びESGの関連性とステークホルダーとのコミュニケーション

上場企業の企業価値向上はどうでしょうか。下の図は、我々の年金を運用するGPIF(運用資産額約130兆円)がSDGsとESGの関連性についてまとめた資料です。

SDGsを企業経営に取り入れ、株主価値を向上させるのがCSV(Creating Shared Value)で、PRI(国連責任投資原則)の投資家が、リスクリターンを犠牲にせずに、社会的、将来的にネガティブな外部性は排除しましょうという考え方がESGであり、SDGsとESGの目指すものは同じであると整理しています。

一方で、投資家の方々と話をしていると、ESGは漠然としていて分かりづらいが、SDGsは分かりやすいという話をよく伺います。SDGsを軸としてステークホルダーとコミュニケーションを取っていくことは上場企業にとって必須だと感じています。

SDGsとESGの関連性についてはPRIでも検討が進められています。PRIは、SDGs検討の第一弾として、SDGsとESG投資の関連性を整理する報告書を作成中で、2017年9月下旬に開催されるPRI年次総会で発表される予定です。また第二弾としてESG投資の中にSDGsを位置づけていく手法についても検討が進められる予定です。

 

中長期的な企業価値向上を目指した経営

2017年5月に日本版スチュアードシップ・コードが改訂され、今秋に機関投資家の改訂作業が本格化します。今回の改訂は、機関投資家によるスチュアードシップ活動の実効性の向上を目指しており、機関投資家がスチュアードシップ責任を果たしていくことが求められています。これはGPIF作成の以下の図が示すように、投資先企業と運用受託機関の「建設的な対話」(エンゲージメント)を促進し、中長期的な企業価値の向上を目指すものです。

「会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために」このフレーズは、東京証券取引所による「コーポレートガバナンス・コード」のサブタイトルでもあります。また、基本原則2にも、「上場会社は、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の創出は、従業員、顧客、取引先、債権者、地域社会をはじめとする様々なステークホルダーによるリソースの提供や貢献の結果であることを十分に認識し、これらのステークホルダーとの適切な協働に努めるべきである。」と定められています。

コーポレートガバナンス改革が「形式」から「実質」へと深化しようとしているいま、SDGsによる持続可能な中長期の視点は、企業経営そして中期経営計画策定に必須といえるでしょう。

 

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